神さま、神さま

<Emmery Annexの過去ログ>

アメリカにいる時、よく宗教は何か?と問われた。
無宗教だと言うと、その後の説明がくどくどと必要になるため、途中から面倒くさくなって「仏教」と答えるようになった。一応、実家は浄土真宗である。般若心経も仏説阿弥陀経も慣れ親しんできて、気が向いたら自分でお経をあげることもあるけれど、信仰しているかどうか、というと違う。

私が「神さま」と書くとき、イエス・キリスト仏陀といった、具象化されたものを指している訳ではない。
学生時代、宗教論がとても苦手で、いつも何か釈然としなかった。
そんな私の心にストンと落ちたのは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」でジョバンニと女の子が神さまのことで言い争いになった時のセリフだ。

「だっておっ母さんも行ってらっしゃるしそれに神さまがおっしゃるんだわ。」
「そんな神さまうその神さまだい。」
「あなたの神さまうその神さまよ。」
「そうじゃないよ。」
「あなたの神さまってどんな神さまですか」
青年は笑いながらいいました。
「ぼくほんとうはよく知りません。けれどもそんなんでなしにほんとうのたった1人の神さまです。」
「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です。」
「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さまです。」

そう、「そんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さま」
いろんなところに神は宿っていると思う。
もちろん私たち一人一人の中にも。
人によって神さまの見え方はそれぞれで、でも最終的には
「たったひとりのほんとうのほんとうの神さま」なんじゃないか、
と思っている。
だから、神さまの見え方が違うだけで争い事が起こるのはとても悲しい。
つきつめれば「たったひとりのほんとうの神さま」のことで争うなんて、なんて愚かしいのだろうか。

惑星の月21日 KIN11/幻想を解き放つ 青いスペクトルの猿