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gentle breeze

コイバナかもしれない

お見合いおばさんが帰った後、なんだかんだ言ってもストレスが相当たまってい
たようで、私はおでかけすることにした。
頭の中で、ドリカムの「やさしいキスをして」がまわっていた。

少し前に暇つぶしで去年末の紅白のビデオを流していた時に聴いて
胸をわしづかみにされたのだった。
「何度でも」のスペシャル・バージョンで歌っていたのですけどね。
翌日、CD屋さんにドリカムのアルバムを買いに行ってしまいました。
なんで「やさしいキスをして」と「何度でも」が別のアルバムに収録されている
んだ?と思っていたのだけど、「やさしいキスをして」は2年前の曲に出たもの
だった。
何度も何度も聴いているうちに、ずっとこれまでもラジオなどで聴いたことがあっ
たってことと、プロモーションビデオだって見ていたことを思い出した。
あのプロモーションビデオは、なんとも印象的というかショッキングな
イメージのものだったと記憶している。
何度も見聞きしていたのに、これまでその歌詞が心に響くことがなかったのに
いきなり今の時期になって歌詞が心にコミットしてくるとは。


あの日、御堂筋線の新大阪のホームで電車を待ちながら
「やさしいキスをして」を聴いていた。

あなたの一日が終わる時に そばにいるね
何も言わないで やさしいキスをして


私が望んで、できないでいること。
吉田美和の声は限りなくやさしく、子守歌のように身体にしみわたる。


電話してくれたら 走って行くから すぐに行くから
なにもかも放り出して 行きを切らし 指を冷やし すぐ会いに行くから


これまでの私は、いや、今の私は、大切な人が会いたいと連絡をくれたなら、
なにもかも放り出してすぐ会いに行ってしまえる。
多分、相手が私に気がなかったとしても。
私の気持ち一つで。

報われなくても 結ばれなくても
あなたは
たった一人の 運命の人


この歌詞を聴いた途端、落涙を堪えることができなくなった。
人が大勢いるホームで人目を憚ることなく私は涙を流してしまった。
報われなくても 結ばれなくても、あなたはたった一人の運命の人、か。

その人と結ばれなかったなら、他の誰とも結ばれない、なんてことは
考えてもいない。他に結ばれるべき人がいるのだろう、と実のところ、
現実的だったりもする。でも、同じ人が二人といないという意味で、
たった一人の運命の人であることに変わりはない。

今日という一日が終わる時に そばにいられたら
明日なんていらない
髪を撫でて 肩を抱いて あなたが眠るまで


ただ、そばにいられたら、と、そればかり願ってきた。
そして、私はずっとずっと待っていようと思っていた。時が満ちるのを。
満ちるのかどうか分からないけど、満ちると思っていた。
宇多田ヒカルが「Be My Last」で
いつか結ばれるより 今夜一時間会いたい
と歌ったように、明日やいつかじゃなくて、すぐ会いたかった。
会えたなら、そばにいられたなら、もう明日なんてなくてもいいって思った。



なんともしがたい気持ちを抱え、「やさしいキスをして」をエンドレスで
聴き、歌いながら、私は桜の木を求めて夕闇の中を歩き回っていた。
建設中のマンションの脇にある人気のないグラウンドに見事な桜が咲いていた。
まるで私に向かって手をさしのべてくるような枝振りの桜の花に向かって、
「やさしいキスをして」を歌いながら、その歌詞のかなしいやさしさに
私はハラハラと涙を流した。
どんな終結を迎えようと、私はただそのままを受け容れると覚悟はきまっている。
何が起こっても、後悔は、ない。
出会わなければ良かったなんて思わない。

この出会いに やさしいキスを これが運命なら


どこかのサイトに「吉田美和は愛そのものです」なんて書いてあったけど
本当にそんな気がする。