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昭和町にて

毎日毎日乗ってる路線だというのに、たまたま天王寺で乗り換える用事があったせいか、いつも寝ている間に通過する昭和町を目覚めたまま乗っていたらふと思い出したことがあった。

かつて、(今も、かもしれないけど)昭和町に住んでいた前職仲間のことだ。
彼は一目見ただけで、「個性的な人なんだろうな」と思わせる雰囲気を漂わせている人だった。なんでもWebデザイナーとして生活をしてるのだけど家に閉じこもってる作業だから、と応募したんだとか。

私が先輩オペとして研修の手伝いをしたのが出会いだったのだけど、まだ独り立ちもしていない研修中の身の上のクセに態度も言動も生意気で、先輩オペ達から
「アイツの研修だけは断る」
と総スカンを食っていた。
当時の私は時々研修の手伝いを頼まれるようになり、少しずつ慣れつつある頃だった。
彼の研修を一度受け持ったことがあって、お客様対応中に激しく暴走するから、隣についていて胃がキリキリ痛み、研修終了後はゲッソリしてしまったけど、悪いヤツじゃないとは思ったんで「自分、おもろいな」という反応を示していた。私は「女だから」と小バカにされない限りは新人くんがどんな態度をとろうと意に関せずだったので、彼の研修を先輩オペ群が拒否したらしいある日、再度手伝うように頼まれたんだった。
上司が本当に申し訳なさそうに
「イヤだったら引き受けなくていいから」
と言ってたのを覚えてる。

勝手に私のことを「まっちゃん」と呼んできて(これまで私のことを「まっちゃん」と呼んだ人はヤツくらい)、なかなかエエ根性してるやんけと思ったけど、そのまま呼ばせておいた。邪気の無い人だったから、少々のことは許せた。

一人前のオペになった後はそこそこ落ち着いたみたいで、あまり接点がなかったのだけど、たまたま隣の席になった時、
「まっちゃん、まっちゃん、見て見て。」
と言ってくるので彼のモニタを覗きこんだら
「これ、僕が作ったCGI
って見せてくれて、その出来に思わず
「プロみたい!」
と言ってしまって
「ごめん、自分プロやってんな」
って付け足したんだった。
無邪気なしゃべりくちと、その後の自作CGIの改善必要事項を真面目につぶやくそのギャップに、
「この人、本当にプロの仕事してんねんなぁ」
って思った。

ある日、偶然帰りの電車で一緒になって、どこまで乗るのか尋ねたら
昭和町まで」
と言うので、かなり長い区間を一緒に乗ってなアカンねんなぁ、と内心ぞっとしていたら、とっても真面目な話をしてきて驚いた。
私が英語を話せるのを知っていたので、自分も話せるようになりたいと思ってるんだ、とか、職場で見せる顔とは全く違う顔を見て、目から鱗が落ちた思いをしたんだった。
そう、彼は自分が先輩オペ達から総スカンを食っていたことも、皆が断る中で私が2度目に研修を引き受けたことも知ってた。

茶目っ気のある人で、駅の近くで真っ昼間からホストみたいな人がサングラスかけて歩いてくるのを見て、昼間っから客引きかよ、と避けようとしたら、私に向かって手を振ってくるから、いよいよ逃げなくては、と思ったら
「まっちゃーん!」
って声かけてきて
「もぉー、どこのホストかと思ったわ。ビックリしたぁ」
なんてこともあった。全身ホストルックはまだ良いのだけど、夏の暑い盛りは上半身のみホストルックで下半身は半ズボンという、何とも中途半端な服装してたこともあった。
「何なーん、そのカッコ?」
と私が笑うと、
「だってぇ、暑いんやもーん」
って、お前はギャルか!みたいな口調で返事されてずっこけたり。

初めて一緒の電車に乗り合わせた後、もう一度、一緒の電車に乗り合わせることがあったのだけど、その時は諸事情で会社を辞めようとしている話を聞いたんだ。
プライベートな話なので書かないけれど、見た目チャラチャラしていて会社でもヘラヘラしている彼の姿から想像もつかない話をたくさん聞いて、脳天を殴られた気持ちになった。

長い期間在籍した人じゃないし、しょっちゅう接点のあった人でもないけど、私の中に強烈な印象を残していった。すっかり忘れていたけど、何でかいきなり思い出してしまったので、懐かしさも含めて書いてみました。

辞めた後、東京に行ったという噂も聞いたけど、実際はどうしてるのかな。
元気にやってるとは思うけど。どこかでバッタリ出会ったらニカっと笑って
「まっちゃん、元気にしてたか?」
って、イヤになるくらい無邪気に声をかけてくるような気がします。