写真

今朝、出かけようとしたら母に呼び止められた。
私の写真、しかもがバストアップと全身の2種類が必要だというのだ。
オーディションに送る写真なんかじゃない。
何に使う写真か尋ねるなんて、愚問中の愚問だ。

「ひきつった顔してないで笑え」
母はカメラを構えて私に声をかける。
笑え、と言われて、笑えるもんか。

できあがった写真はどこかのお見合いおばさんの元に届けられるのだ。
商品写真みたいなもんだ。
お見合い写真なんて今時、着物姿で写真館なんかで撮らない。

アメリカから帰国した直後、叔母の友人にプロのカメラ・ウーマンがいるので
公園であちこち移動しながら写真を撮ってもらったことがあり、それを
見合い写真として使っていた。6年前だから、アップデートしないと、
という訳だ。

彼女に写真を撮ってもらった時は、お見合いに関してはポジティブだった。
結婚に関しては何の希望もなく、結婚はビジネスと思ってたのだ。
恋愛で結婚するんだ、なんて思ってなかった。
両家が納得し、経済観念や価値観がある程度合うようなら、
それで構わないと思ってた。
とりあえず結婚してしまえば、愛情なんてものは後からついてくる、
それで十分だと思っていた。
ただ、結婚する前に一度で良いから両思いでお付き合いしてみたい、
という希望だけがあった。
たった一度で良い。その恋が終わったら、その思い出だけを胸に
残りの一生を生きていける、と思ってた。
でも、その一度の恋で私は変わってしまった。

結婚に対して希望を持てないのは以前とまったく変わりないけど、
ビジネスとして割り切った結婚はできない、と思うようになった。
家父長制では娘はイエの財産だが、私は自らを商品にできない。
だから、製品写真(見合い写真)や製品紹介(釣書)も私は自分で作らない。
せめてもの抵抗だ