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モーニングムーン

コイバナかもしれない

朝、目が覚めてカーテンを開けたら朝焼けの空だった。
キレイだな、と思いながら振り返ると、そこには満月前日の月が冴え冴えと輝いていた。
モーニングムーンだ。
朝に輝く月を見ながら、愛とも恋とも言えないけれど、ただ心から大事に思った人のことを思い出した。

その人を意識するようになったは些細なきっかけだった。
ある日のミーティングの時、ふと背後からふわりと私を包むような温かいオーラを感じた。不思議に思って振り返ったらその人がいて、私はなぜかドキリとしたのだった。名前を知っている程度の間柄でしかなかったのに。
意識し始めると、その人は私が仕事している間は必ず視界の中にいる人だった。
シフト制の会社でお互いのシフトが完全一致していたのだった。
この後、急接近したとかそういうことはない。
私が気づいてなかっただけで、いつも一緒にいるってことを意識し始めただけ。
当時は件の彼氏はまだ関西にいて、それなりにやっていた。

二人きりで会話や視線を交わしたり、ということはほとんどなかったけれど休憩室では、隣や前が空いてたら、至極自然にいつも隣や前に座っていた。
そこに会話も視線の交差もなかったけれど、何かが通じていた感じ。
何があった訳でもないけれど、いつの間にかとても大事な人になっていた。
とても好きで、狂おしいくらい好きだと思ったけれど、不思議なことに二人きりでデートをしたいとか、お付き合いしたいとか、手をつないでみたいとか、セックスしてみたいとか、そういった欲求が全然湧かなかった。そういった思いをその人に対して抱くだけで、その人を汚してしまうような気さえした。
ヴァレンタインデーに、義理のふりをしてチョコレートを渡すことですら、その人を汚してしまうような気がして、できなかった。
好きだ、それも狂おしいくらい好きだ、という思い以外、何もなかった。
これは浮気だろうか?と思った。
でも、乗り換えるといったことは頭をかすめたこともなかった。
ただ、その人が私の視界にいればそれだけで良かった。会話も視線も交わさなくても、近くにいると感じる温かいオーラだけで満足だった。
彼が私のことをどう思っていたかは、今も分からない。
ちょっと特別な人、くらいだったのではないかと思う。
そんなことはどうでもいい。
言葉の交わりも視線の交わりもなくても、磁石の対極が引き合うように私たちは自然と近くに引き合って、心が温かな時間を過ごせて、何をしてくれた訳でもないけれど、彼は私の心の支えだった。
私の大切な大切な思い出。
神さまがいたずらでもしない限り、多分その人とはもう会うことはない。

            見上げたらモーニングムーン 夜にはぐれて
            朝焼けのベランダで戸惑っている
            愛だとは呼べず 恋と決めず ただ君を心から大事に思った
            モーニングムーン
               「モーニングムーン」CHAGEASKA