SPIRIT

角座に「SPIRIT」を見にいってきました。

実在した伝説の武術家、霍元甲(フォ・ユァンジャ)の史実を盛り込んだ「フィクション」です。
マーシャル・アーツ好きとしては堪らん映画でございました。
風格に満ちた美しいアクションの数々に見惚れました。
でも、ただのアクション映画ではありません。
武術とは何か? 勝つということとは? 本当の強さとは何か?
ということをテーマが貫かれていて、心洗われるセリフが多々ありました。
武術は人に復讐をしたりする為に使うものではない。
己との闘いである、などなど。
精武体操学校のモットーが読みあげられたシーンは涙が出ましたわ。

武術の精神については、小学生の頃に知りました。
キック・ボクシングを習っている子がいて、彼が子ども同士のケンカに巻き込まれた時、殴られっぱなしで彼は手をあげなかったのです。キック・ボクシングを習っているのだから、簡単に勝てたはずなのに、どうして殴られっぱなしだったのか、と訊かれて、
「キック・ボクシングをやっているから人より強いのは当然だ。技を習っていない人に対して力の誇示の為に使ってはいけない、と先生に教えられた」
みたいなことを彼は言ったのです。
小学生だったから、そんな難しい言葉では言わなかったはずなんだけど、
「そうか!武術って、人を倒す為のものじゃないんだ!」
って、子ども心に深いインパクトを与えたのです。
まがりなりにも、これまでに武術は少しかじりましたので、武術で身につける強さは他人を傷つけたり殺めたりするものじゃない、というのは身にしみております。

映画の大半が武闘シーンなんですけど、すべての希望を失ったフォが放浪して拾われた先の村の人たちの純朴さ、自然と寄り添った生き方が、何とも良い対比となっておりました。

フォと闘う西洋のファイターたちが、皆、スポーツマンシップをわきまえた人物として描かれていたのが良かったです。田中安野役の中村獅童は素晴らしかった。中国における反日感情が高い今日この頃、崇高な武術家魂を持った日本人武道家が描かれていたのはスゴイと思った。

武闘シーン満載で、それだけでも楽しめるけれど、その奥にある反戦メッセージをしかと受け止めました。とっても清々しい映画でございました。