あの夏の花火

気が付けば、8月も終わってしまった。
夏の終わりに思い出話を一つ。

先日、会社で呑み会をした時、会場がそばにある空き地で花火をしている人たちがいた。ちょっとした打ち上げ花火もしていて、それが見えたのだ。

その花火を見て、学生時代の花火大会を思い出した。
学生時代、音楽サークルに所属していて夏といっても9月初旬だったが、合宿があった。
合宿中と合宿後にコンサートがあったので、
「起きて朝飯食ったら練習、昼飯食ったら練習、
晩飯食ったら練習、練習が終わったら風呂入って寝る」
という毎日がひたすら続く合宿だ。
合宿の最後に花火大会があって、合宿に参加しない4回生が花火を差し入れする、という習慣があった。

最初のうちは皆、おとなしく手持ち花火などをして、連続花火やロケット花火も正しく地面に差し込んで点火をして楽しんでいるのだか、そのうちに連続花火を肩にのせて走ったり、ロケット花火を手に持って発射させる輩が出てくるのがお決まりだった。

そんなことをする輩は男なんだが、私もやってみたくなったのだ。
誘ってもらったのだか、自分からやったのだか覚えてないが、気づくと連続花火に点火して肩に担いで走っている自分がいた。

火のついた連続花火を担いで走る 
   − それはとんでもない快感だった。

走りながら、背中で花火が打ち上がっていくのが体感できるのだ。
冷静になって考えれば、かなり危険な行為である。
間違っても真似をしてはいけない。
でも、何にも代え難い快感だった。

「Emmery!! お前、何やっとんじゃぁ、女のクセにぃ!!」

と、先輩(♂)に怒られたり、逆に

「Emmeryのやりそうなことやで。。」

と呆れられたり。

それはそれはもう、花火と共にはじけ飛んでいたのだった。

翌年、私のその姿を覚えていた先輩が、花火の差し入れで

「Emmery、お前のために特別に買ってきたったでー」

と嬉しそうに渡してくれたのは、何連発だったか忘れたが、当時としてはかなり回数の多い連発花火だったと記憶している。
喜び勇んで火のついた花火を担いで走り回る私をみて先輩達は、

「Emmery、あいつマジでアホやで」

と笑っていたのを私は知っている。
でも、そんなこと意に介さないくらい、快感やった。

今、同じ事やれ、と言われたらできると思う。
でも、あの時のような快感は得られないような気がする。
若かったからできたことなのかもしれない。
会社の人たちは、私のやんちゃな時を知らないので、そんな話を聞きながら、
「Emmeryさんって、そんなことする人だったんですかー」
なんて言われた。
夏の花火に留まらず、私の大学時代なんて、
90年代初めにも関わらず70年代の濃厚な残り香のような場所に身をおいて、
私がやんちゃであったこともあって、ちょっと(とっても?)変わったことをたくさん経験したような気がする。

あのやんちゃな時代を夏に例えるなら、
学生を卒業すると共に夏の花火のように
きれいに燃え尽きてしまった。
あんなに弾けることができたのは若さゆえか。
こんなこと書くと、かなり年くったみたいだけど、
今振り返ってみて、夏の日差しのように強烈な思い出。