きらきらひかる

三人姉妹で三人がお互いに持っていると知らないで買って愛読した本が1冊ある。
江國香織きらきらひかる

私は薬師丸ひろ子主演の映画を見て気に入って原作本としてハードカバーで買った。
二人の妹たちはそれぞれ文庫で持っている。
去年の秋、真ん中の妹の結婚式に出席するために一時帰国していた末の妹が
熱心に読んでいたのが、この「きらきらひかる」だった。
真ん中の妹が持っている文庫を拝借して読んでいるのだろう、
と思っていたのだけど、そうじゃなくて自前で買ってきて読んでいた。
こうして、三人姉妹で同じ本を各々が購入し、愛読したことになった。

本の中で、アルコール依存症の笑子が同性愛者の睦月と結婚し、
月の恋人である紺との不思議な関係が描かれてる。
映画では、笑子役で薬師丸ひろ子、睦月役で豊川悦司、紺役で筒井道隆が演じていた。
私はともかく、妹たちはどんな思いで読んだのだろう。

きらきらひかる」が公開されたのは1992年。
ちょうどあの頃は、「おこげ」「20歳の微熱」と立て続けにゲイものの作品が
公開されていたと記憶している。
男オトコした人がダメ、というか、私を女として見てくる男の人が怖かった私は、
きらきらひかる」や「おこげ」のヒロインたちに真剣に憧れた。
肉体関係は介在しないけれども、男女の愛、といえるものが
ストーリーを通じて見えたから。男性恐怖症だったけど、
だからといって男の人を諦めきれない私にとって究極のファンタジーであり、
心の救いでもあった。

確かあの頃、「究極の選択」ゲームというのが流行っていて、
第三舞台の「宇宙で眠るための方法について 序章」という舞台で
「愛のないセックスとセックスのない愛、
一生の間どちらか一方を選ばなきゃならないとしたら、どちらを選ぶ?」
と「究極の選択」を迫るシーンがあったと聞く。
舞台の上で、迫られた人は困り果ててしまう訳だが、
私はそれを聞いた時、迷わずに
「セックスのない愛」
だと思った。

きらきらひかる」の中で、笑子と睦月は「セックスのない愛」を選んだと言える。
それを睦月の父親が「水をつかむようなもの」と称した。
人は、何か確かなものをつかんでいないと不安になるものか。
特に男女間においては。。

映画を見て原作を読み、笑子が持ったような男女関係に憧れた時から10年以上経ち、さすがに
「愛のないセックスとセックスのない愛、一生の間どちらか一方を選ばなきゃならないとしたら、
どちらを選ぶ?」
と「究極の選択」を迫られたら、即答できない程度、大人のオンナにはなりました(苦笑)