練習メモ

チャレンジングだった講座も終わって、ほっと一息。
10年過ぎて、やっと理解したことがいくつかあって、
一生かけてこれからも取り組み続けるんだと改めて思う。

朝晩の行き帰りや休憩時間など、合間合間に「ビジネス」を爆音で聴きすぎて
耳が軽い難聴状態に陥る。
しかしながら、皆に背を向けて爆音で「ビジネス」を聴いてなければ
やっぱりどこかで自分が狂ってしまいそうな何かが突き上げていた。

家に帰って何はともあれ、ハーモニカの練習をする。
ベンドと替え指を中心に小一時間程度。
吹いたり吸ったりしながら自分で無心に音を作っていると気持ちが落ち着く。
そして10年前のあの日以降、ハーモニカの音がショッピングセンターのBGMで
聞こえてきただけでも耳をふさいで叫びたくなった時期を完全に脱出した自分を
再確認する。

私がハーモニカを習い始めたことを知って、
なんで10年目にしてハーモニカを習い始めたか、
あの人は理由を尋ねてこなかった。
「私はあなたの先生の孫弟子にあたるねん」
と言って、私が自分の先生の名前は最後まで言わなかったけど、
無理に言わそうとはしなかった。
ま、言わなくてもハーモニカ人口は少ないから、調べたらすぐに誰か分かるから、
言っても言わなくても、同じなんだけど。

「おまえさんは、楽譜もよめて前からやってたんだから上達も早いやろ」
と言って、あれやこれやとしばし、奏法や練習のことで話をした。
学生の頃、こうやってハーモニカのことをよく話したよね。
そうして一緒に練習してたよね。
学生時代、楽譜が読めてリズム感もあり、たいていのフレーズを難なく
すぐにマスターしていく私を見て、あの人が嫉妬していたのを知ってる。
でも、知ってた?
クロマチックに関しては、私が自分の納得のいく音が最後まで作れないで
悩んでたこと。音色と演奏しているときの世界観は、最後の最後まで、
あなたと肩を並べることができなかったと思っていること。

先生に習わなくても自分でできるでしょ、と、あの人はいぶかしがったけど、
単なる趣味以上の思いも含めて、ハーモニカをふいてる。全然別の話題で
「趣味でやってるハーモニカで苦しんでるやなんて。。」
とあの人が言った。私はそのセリフに何も返せなかった。
私の思いを見透かしたかのようなセリフだったけど、
あの人がそれを知って言ったセリフでないことが皮肉だった。
そして、そのセリフに対して私が本当に言いたかったことを、
あの人は知るよしもない。