ペンデュラムのように

最近は「結婚の条件」で有名になった小倉千加子さんですが、
1988年に大阪YWCAにて「いのちLOVE 世紀末・女の人生すごろく」
と題して行われた講演を元に書かれた
「女の人生すごろく」の中にこんなくだりがあります。

過半数の女の子は、今の彼とはそろそろ別れごろだと思っています。
「今、つきあっている彼氏いる?」
というふうに女子大生に聞いて「います」と答えた時は、
「じゃあ、私は手相を見られるから手相を見てあげようか」とか言って、だまくらかして見て、
「今、あなたは別れようか別れまいか悩んでますね」って言うと
「どうしてわかるんですか!」
<中略>
「あなたはこの人と別れます」
と言うと、「やっぱりね・・・」って言うんですね。
「あなたはまだこの彼と別れられません」と言うと、
「やっぱりね・・・」って。どっちでも同じなんです。


これを初めて読んだのは学生の時だから、もう10年以上も前。
その頃は、ステディな彼氏もおらず、そんなものなのか。。
と自分に体験がないものだから不可解な思いで読んでました。
今の私なら、ころっと小倉千加子にだまされると思います。
本の中の女の子たちと同じだから。

関東でマンションを購入することになったり、年齢も30代の折り返しを迎えたり、
会社勤めをきちんとするようになって、毎月収入が入るようになったり、
といったいろんな理由が重なって、彼氏は「結婚したい」と言うようになった。
私が関東に行きたがってないことや、結婚をしたがってないのを知っているから、
敢えて私に対してプロポーズしてくることはないけど、
「結婚したい」と口うるさく言う。

そのたびに、私は悩む。
親に反対されているのを押し切って、隠れてつきあう、というのを続けたから
結婚に持ち込もうとするには、かなりのエネルギーを要する。
でも、私にはエネルギーを用意するだけの情熱がない。
「結婚は勢いだ」と言うけど、本当にそうだと思う。
友人たちの反応も様々。
両親に反対されてる人なんて、やっぱりダメだと思う
という人や
両親に反対されてもつきあってるなんて、ロマンティック
という人。
結局、自分で決めないといけないんだけど。
別れた方がお互いのためになるのかも、と思ったりしてね。
でも、親に反対された都合、別れたら親の言うなりや、
という妙な意地が働いて、それが私にとっての別れられない大きな理由の一つとなってきた。

本当に結婚したい、と思うなら反対されても許してもらうまで
日参するくらいの人でないといかん、
と親は言いました。
妹の友達の両親に、結婚を許してもらうまで半年近く日参した方がいるからね。
彼氏は日参どころか、一度として私の家まで来たことも、
両親と会ったこともない。
あの時は、全てを拒否して、私に
「親なんかいつか捨てるもの。身一つで来い」
みたいなことを言った。
私の両親につきあいを反対された時、自分が定職を持たない社会人学生で
自分に自信が無かったから会いに行けなかった、
今考えたら自分が幼かった、と彼氏は言う。

多分、多くの人はこんなことがあった時点で、
相手に愛想尽かして別れてしまうんじゃないかと思う。
でも、私は親への反抗の方が大きかった。
私も若かったんやな。

今、彼氏が関東から私の家まで日参するようなことをしたら、
「親の反対を押し切るエネルギーがない」のと
「念願叶って就いた今の仕事を辞めて関東に移り住む気がない」
私の気持ちは変わるかもしれない。
でも、そんなこと、他人に頼ったらいけませんね。
最後には自分で決めることか。
そんなこと言ったら彼氏が
また、「一人」で物事を決めようとして、と言うかな。

悩みながらも今年のクリスマスイブで、
つきあってちょうど5周年記念が巡ってきます。
私の中で、
別れた方が良いかも?
いやいや、そんなこと今更言わなくても。。
と心のペンデュラムが大きく揺れるのです。

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小倉千加子「女の人生すごろく」ちくま文庫