マグカップ

マッキーの「どうしようもない僕に天使が降りてきた」を聴いていて、
思い出してしまった情けない出来事。
この曲の中では、昔の恋人がくれた目覚まし時計をいつまでも使っている僕に
彼女がキレて、目覚まし時計を持って外に飛び出していって、空き地で投げ捨て
てしまう、というストーリー。

あれは彼氏とつきあい始めて2年過ぎた頃だったと思う。
彼氏の部屋のキッチンで、さりげなく置いてあるマグカップと目があった。
物と目が合うわけないだろう、と言われそうだけど、あれは目があった、
としか言いようがなかった。どう見ても彼氏が買ったと思えないブツだった。
彼氏に尋ねると、ある女の子がお茶を飲む時用に置いていったんだと言う。

よくよく聞くと、その頃、頻繁に家に尋ねてくる女の子がいたらしい。
何で知り合ったのかまでは覚えてないけれど、相手は消費者金融で営業を
している人で、彼氏のことを好きになってしまったらしく、営業で近くに
来たからと家に顔をだすことがちょくちょくあったらしい。
それで、立ち寄った時に自分のマグカップでお茶を飲めるように、と
置いていったらしい。ステディな彼女がいると知っての行為で、
私に対する明かな挑戦状だった。

挙げ句、終電が無くなったんだったか理由は忘れてしまったけれど、
部屋に泊めてあげて、寒かったから一緒のふとんで寝たのだと、
それも背中にずっと寄り添ってくれた状態で眠ったのだと、
まぁ、今更ながら書いていて情けなくなるのだけど、そんなことを
しら〜っと話し、聞かされたわけです。
(この程度の出来事は、別れるまでに何度も別の女の子との間であった)
当然、私は
「次来たらマグカップ持って帰らせ!!!泊まる場所のない女の子を
部屋に泊めるのは許すけど、部屋は他にもあるんやから女の子に
ふとん寝かして自分は寝袋で別の部屋に寝たらええやろが!」
と激怒したわけです。

当時、彼との交際を私の両親から大反対され、別れたことにしてこっそりと
つきあっていたので、相手の女の子に弱みを握られた、
ここで「別れる!」なんて言ったら、向こうの思うツボだし、
勝負に負けたことになってしまうとその時は思ったのです。
私の剣幕に「次来たら持って帰らせる」と彼氏は言ったのだけど、
それ以降、彼女が彼氏の部屋を再訪することはなかったようです。
これに関しては、嘘のような本当の話があるのだけど、本筋外れるので
ここではやめておきましょう。

機会があるたびに、処分しろとうるさく言ったにも関わらず、マグカップは
垂水に引っ越した時も、横浜に引っ越した時もなぜか処分されることなく
一緒についていって、横浜の時はさすがの私も
「なんで処分せんかったのや!」
と怒ったのだけど、最後まで台所の隅に鎮座してましたね。
今も置いてあるのかなぁ。別れちゃったから、もうどうでもいいけど。

マッキーの「どうしようもない僕に天使が降りてきた」を聴くと、
曲の中に出てくる彼女のように、マグカップを持って外に駆けだして
空き地で投げ捨てたらどうなってたかな、と思ったりする。

付き合ってもうすぐ1年で
ずいぶん仲良くなったから
キスしたって抱きしめたって
挨拶みたいに思ってた
やっぱり空き地で見つけた
君はなんだか他人みたいに
僕におじぎをしてみせた
「愛を勘違いしないでください」って
君が両手を空に上げて
目覚まし時計は飛んでいった
まるで誰かを見送るように
そっと微笑んで
     「どうしようもない僕に天使が降りてきた