分からない人たち

今日は、クエッショニングについて。
個人的なお話が含まれるので、少々腰がひけてます。
分かる人にしか分からない言葉で書いた部分もあります。
その辺りはご容赦ください。

一般的には、生まれたままの自分の性別を何の違和感もなく受け容れ、異性が恋愛対象となり性的指向となることが普通であり、そうでない人はいわゆる変態(クィア)と言われたりします。

ところでみんな、自分自身をヘテロ、ホモ、バイのどれかにカテゴライズできる?
実は私、自分自身をどれにもカテゴライズできないのです。
ずっとずっと、そのことで悩んできました。
私は身体も心も女であることに違和感はありません。
そこに、先天性の極度の男性恐怖症があります。
先天性というのは、赤ちゃんの頃から父と祖父以外の男性が私の顔をのぞきこんだりして話しかけようものなら火がついたように泣いていたらしいから。
例えば、母が八百屋さんで野菜を買おうとした時、八百屋のおじさんが私を見て「かわいい赤ちゃんだね」と私を見て言っただけでも、私は相手に申し訳ないくらい泣き叫んだそうで、母は私の顔が他人から見えないように乳母車をとめるのに苦労したと言ってます。
その後、先天性の男性恐怖症を上塗りするような出来事が私を何度か襲い、酷いときには今でいう「ひきこもり」もやりましたし、20代後半までSexually inactiveでした。
男性恐怖症のせいか分からないけれど、自分がヘテロセクシュアルだ、ということに違和感をもっています。自分の中では、ヘテロセクシュアルホモセクシュアルの境界線上にいて、何かあればどちらにでも転べると思ってきました。それを人はバイセクシュアルというのかもしれない。それもしっくりこない。

極度の男性恐怖症だったから女性となら大丈夫なのかな?とレズビアンの多いアメリカ時代の大学で思っていたのですが、「性的指向」という意味において、それも当てはまらないことが分かり、性的指向において私は何者?とアイデンティティが確立できないでいました。たまたまESLのクラスで性的な欲求、セクシュアル・オリエンテーションが誰に対しても向かない人のことをasexualということを知って、当時はSexually inactiveでしたので、そうか、私はasexualか、と思って、言葉があるくらいだから私みたいな人は他にもいるらしい、と知ったのです。

男性恐怖症に関しては、いろいろ言われましたねぇ。
好きな男性か彼氏ができたら治る、とかね。
そんなので治るんだったら、とっくに治って悩んでませんって。
私の場合、全男性がNGなのではなく、大丈夫な人とそうじゃない人に分かれます。
そんな話を友人にしたら「私もそうよ」と言ってくれる人に出会いました。
彼女は結婚もして子どももいるけれど、やっぱり男性恐怖症なのだそうです。
「夫は私にとって『大丈夫な人』だったの。私が夫との結婚を決めたのは、私が彼を裏切ることがあっても、彼が私を裏切ることは絶対にない、と信じることができたから。」と、彼女が話してくれたのは今でもよく覚えてます。そして、私もいつの日かそのような男性と巡り会いたいと思ったのです。

それから、ヘテロセクシュアルホモセクシュアルの境界線上にいて、何かあればどちらにでも転べるなんて話をしたら「襲わないでよ」なんて
言われることも多々あって、「誰がアンタを襲うんだ(怒)」と秘かに怒ったり。
だいたい、どうしてホモセクシュアルのこととなったら性行為のみが着目されがちなんでしょうか。アダルトビデオの影響ですか?
それに、好きになった/気になる人に同意も求めずあなたは押し倒す人ですか?
自分の性的指向が分からないことを友だちに話してしまったことで友だちが友だちでなくなったこともあります。

大学時代の後輩が私と同様に大学卒業後にアメリカ留学してきて、彼はLAのゲイの多い地域に住んでましたので、
「ゲイの友だちがもしかしたら僕を襲ってくるかも、って思ったりする?」
と尋ねたところ、「あるかもってドキドキする」という答えでしたので
「アホか、アンタは女の子と一緒になったら見境なく押し倒すんか?
そんなことせーへんやろ? 好きになった女の子と一緒になった時も、相手の意向も訊かずに押し倒したりするか? そういう男もいるやろうけど、少なくともアンタはそうやないやろ? ゲイもノンケ一緒や。それにゲイにも選ぶ権利がある。アンタがゲイと一緒にいたら襲われるかもって思うのは、誰からも好かれてるかもって思うのと同じ、思い上がりや。」
と言ったら、納得してくれました。
まぁ、これには男性自身が男性のジェンダーバイアスに囚われてるってことでもあるのですけどね。

話がクエッショニングの話から脱線しすぎてしまいました。
学生時代、女性学専攻の仲間内のレポート用のアンケートにセクシュアル・オリエンテーションに印をいれる設問があって、そこにはヘテロ、ホモ、バイの3種類しかなく、「その他」というのがなかったことがありました。その時、本気でどれも選べないと思ったのです。プライベートでも女の子同士の猥談に入れない。
いつからか忘れたけれど、カテゴライズできなくてもいいや、と開き直って「どっちでもないセクシュアル」って言ってました。その頃は、まだクエッショニングという言葉を知らなかったし、もしかしたら言葉そのものがまだなかったのかもしれません。

アメリカから帰国した後、彼氏ができても「私はヘテロだったんだ」とは思えず
「今は彼氏がいるからヘテロセクシュアルやってる」という認識でした。
彼氏もそのことは知っていて、私のことを困った人だなぁと思っていたようです。
やっぱり男としてのプライド?は傷ついたみたいで、何度となく問いつめられたりしましたね。

クエッショニングという言葉を知ったのはいつか忘れましたが、私の中でその用語がコミットすることなくしばらく過ぎて、去年の春に彼氏と別れて、
「あー、しばらく男はコリゴリ」
って思っていたら、すっかり忘れていた
「私の性的指向って何?」という揺れが出てきたのです。
そこにTGの友だちに「LGBTI」にQuestioningの「Q」がくっついて「LGBTIQ」って呼ぶ流れになってる、という話を聞いて、性的指向が分からない人たちもやっぱり私だけじゃないんだなぁ、と知ったのです。

脱線含め、長い長い個人的なお話になってしまいました。
こんな話を書いたんで、ずいぶんとひいてしまった人が多いかもしれないですね。
まぁ、今回知って欲しかったのは、誰もが皆、はっきりした性的指向を自覚しているわけじゃない、分からない人もいるということです。