ピアノな午後

天気が良いから久しぶりにピアノが弾きたくなった。
時々、それも本当に時々、無性にピアノが弾きたくなる。
でも、夜だったり、諸々の事情で「弾きたい!」の気持ちの時に
ピアノに向かえることがあまりない。
だから、弾きたい!で、ピアノに向かえた幸せなタイミングであった。

無性に、それもとっても無性に千里さんの「サヴォタージュ」が弾きたかった。
特に意味はないけれど、ピアノに向かうといつも最初に弾くのは「17℃」
私が中学2年生だった1986年に発売された「AVEC」の中の1曲。
最初のコードワークが好きなのだ。

前にピアノを弾いたのはいつだったか思い出せない。
半年くらい前?
以前のように思いのままに指が動かないのは、分かっていることだけど
更に動かなくなっていた。
軽く歌いながら「17℃」「マリアじゃない」と弾いてみて「サヴォタージュ」
ピアノの鍵盤が妙に重く、指の力が衰えたなぁって思った。

そこで基礎に戻って、ハノン。
子どもの頃は大嫌いだったけど、基礎の大切さ、基礎をやり直す大切さは
今になると分かる。
子どもの頃に使っていたハノンを開いて、一つ一つさらっていく。
先生が書き込んだ注意事項、次週までの課題。

弾いていると、子どもの頃を思い出した。
3歳から中学卒業まで通っていた某大学付属の音楽教室のこと。
ボタンを掛け違えたかのような出来事がたくさんあって、
私はピアノ科に入れなくて、すっごい特例で他の科に所属していたけど
実技免除で一人だけぬるま湯のような生活を送ってた。
聴音とか楽典とかいろいろなクラスがあって、どれもこれも得意じゃなく、
すーっごく落ちこぼれで、成績のひどさに母が何度となく呼び出しをされて、
「先生は私の後輩なんだから恥をかかせないで」と叱られたこともあれば、
退学勧告が出たこともあった。でも、授業態度が真面目だったので、退学は
免れたのだけど、一番下のクラスで過ごして、音楽は勉強であって、好きだけど
好きじゃないような、アンビバレントな子ども時代。
ピアノも大嫌いで、ピアノなんか燃えてしまえばいい!って
小学校の高学年まで思ってた。

中学生の頃に、勉強として与えられたものでなく、自分が好きだから弾く
勉強じゃなくて自分の楽しみとして音楽をやるってのを千里さんを通じて
開眼した。だから、千里さんの曲を弾いてると、音楽に対するあの頃の
ピュアな喜びを思い出す。
友達と遊べなくて悲しかったとか、授業についていけなくて辛かったとか
いろいろあったけど、今、こうやって本当に好きで自由に弾いていると、
胸の奥でしこりになっていたものが溶けていくような気がする。

幼少の頃から、すっごい教育を受けさせてもらっていたのに
学業という意味では花開くことなく、申し訳ない思いでいたけど
別の方面で活かせて、楽しめるようになって幸せだと思う。

小一時間ほど弾いて、気が済んだ。
左手の小指が非常に弱くなっていたので、ほんのりと左腕の筋が
痛くなった。