鎮魂


あの日の朝、出社した時、事故が起こったことを知らなかった。
東京のお客様から慌てた声で
「大阪で列車の事故があったと聞きましたが、みなさま、大丈夫でいらっしゃい
ますか?」
という安否確認の電話がかかってきて、なんのこっちゃ・・と思いながら、
「えぇ、全員出社しております。」
と、のどかに答えたのがちょうど1年前のことだけど、妙に鮮明に記憶している。
上司に「どこかで列車事故起こったみたいですねぇ。」
なんて言いながら、ネットでニュースをチェックして、JR宝塚線福知山線)の
事故を知ったのだった。まだ、事故の規模を知らず、ちょうど母校向いて走っていた
列車と知って、ちょうど2講目に出席するために乗っている学生が巻き込まれて
るんじゃないかって、ちらっと心配した程度だった。

我がチームのメンバーにも、親戚から安否確認の電話がかかってきたり、
当時はまだ別れていなかった彼氏が東京から
「列車事故があったけど大丈夫か?」
なんて電話をかけてきて
「会社に行くのにJR宝塚線なんて乗らへんこと知ってるのにどうして?」
と返したら、
「もしかしたら出張で使ってたら、と思って心配したんや」
なんてすっごく真面目に言われたりして、事態の酷さを知らなかった私は、
今日はいったい何がどうしたんやろなぁ〜、なんて思っていたのだった。
そう、お昼休みになって、事故の詳細を知るまでは。

事故の酷さを知り、唖然としていたら、他のチームには件の線を使って通勤して
いる人がいて、当日、彼女は掃除当番だったのでいつもより早い列車に乗ったのだけど、
いつもの列車が、件の事故の起こった列車だった、ということを知った。
もし掃除当番でなければ、いつもの列車に乗って事故に巻き込まれていたことに
なる。運の強さって、やっぱりあるんだ、と思った一瞬だった。

あれから1年、事故に関わった人たちにとって長かったのか、短かったのか。
二度と同じような事故が起こらないように、としか祈りようがないのだけれど、
いろんな人のいろんな思いに気持ちを馳せながら、しばし、黙祷した。