誰も知らない

ご存じ、主演の柳楽優弥くんがカンヌ映画祭で史上最年少で主演男優賞をもらった作品です。
平日はともかく、週末はどことも整理券を発行する人気ぶりと聞いて、
華氏911」と映画のハシゴをしたかった私はちょっとひるんだのですが、
シネフェスタでハシゴしてきました。

上映1時間前に整理券をとって49番。
実際の上映時は満員で、おぉ、すごーい人気だ、と感心。

前から見たい、見たい、と思っていたけど、
実際に上映が始まろうとした瞬間、気持ちがひるんできた。
というのも、実際には悲惨なお話で、目を覆いたくなるような辛いシーンも沢山あるのではないか、と思ったのだ。

でも、実際に見てみると、前評判通り、ストーリーを通して是枝監督の温かいまなざしに包まれたいて、凄惨なシーンがスクリーンで映し出されることはありませんでした。

見るまでは、泣くだろうな、と思っていたけど、実際には泣けなかった。いろんなエピソードを知って、見る前に涙ぐみそうになったりはしたけど、実際に見たら、目を大きく見開いたまま釘付けになっていたような感じ。

本当の事件は、とても悲惨だけど
映画の中で映し出される子どもたちだけで作り出される
一種のユートピアと過酷な中でも淡々と生き抜いていく強さに救いというか、
痛いけど安堵みたいなものがありました。

そもそもは、母親が子どもを置き去りにして新しい恋人のもとに走った結果起こったという、ぱっと聞いた感じ、母親に責めを負わせたくなる事件です。
でも、置き去りにした母親だけが悪いのか?
それぞれの子どもの父親たちは無実か?
そして、当時は今よりももっと深かったであろう日本における根強い婚外子差別。

いろんなものが絡まり合って事件が構成されています。

評判通りの柳楽優弥くんの強い目と、どんな環境にあっても、子ども達が生活が「愛しみ」に満ちたものであったこと(これが是枝監督の成しえたことなのでしょう)
見終わった後に、「子ども達がかわいそう」などと簡単に言い表すなんてとんでもない位、いろんな思いを抱かせ、考えさせられる映画でした。

何も考えずにまずは映画を見て、いろんなことを考えて欲しい、
そんな風に思います。