件のお見合いのこと。その3

今回で件のお見合いの話はおしまいです。

前のエントリから続きます。
最初は単純に「この人とつきあうなんて絶対にイヤだ」と思っていたけれど、お見合いだからイヤだと思ってるんじゃないか、何回か会ったら、見合い相手の良い部分も見えてきて好きになれる可能性があるかもしれない。
などと、自分で自分を言い聞かせようとし始めていた。
嫌がっている自分が悪いことのように思えてきたのだった。
自分の中のいろんな思いを全て捨てて相手を見たなら見え方も変わるかも、
そんな風に、なんとか見合いを正当化しようとしてた。

その頃の私は虚ろだった。
自分の中に一本通ってる心棒みたいなものが足元から切り倒されて軸が外れてしまったような、
自分の中の心の目、真実を見る目が曇ってしまったような、
自分が自分でなくなってしまったような、
そんな気持ちだった。

そんな日が続いたある晩、見合い相手の夢を見た。とてもリアルな夢だった。
夢の中で私たちは結婚が決まってしまっていたらしい。
詳細は省くけれど、愛情を示す行為を受けた私は、本来うれしいと思うべき行為に対し、とにかく心底から悲しくて、私から離れて欲しくて、近づいて欲しくなくて、でも結婚すると決まった身の上でふりほどくこともできないまま、泣きながら小さな声で「やめてください。お願いします。」と言うのが精一杯だった。
私から離れた相手は「嫁になるはずの女がこれじゃあな」みたいな反応を示した。
目が覚めて夢だったことに安堵しながら惨めな思いでいっぱいだった。

どんなに自分を言い聞かせたとて、ずっと耐えられるものではない、と分かった。
とはいえ、今更私から「やっぱりイヤです」と言えなかった。
夢で嫌な思いをしたから、なんて理由は通らない。
あともう1回会って、二人きりになった時に
「申し訳ございません。この縁談、そちらから破談にしてください。」
と、地に頭をつけてでも謝って断ってもらえるようお願いしようと決めた。

その思いが通じたのか、翌日だったか会社から帰ってきたら母が
「あの話、先方から断りの連絡がきた」
と言ってきた。
「相手がお嬢様過ぎて肩の荷が重いです」というのが理由だったらしい。
先方のお母様は私のことを大変気に入ってくださっていたそうで、仲人と二人して何とか説得しようと試みられたらしい。
仲人は
「やっぱり新大阪駅まで見送るように指示しておかなかったのが失敗の原因だった。男の人は女の人が積極性を見せたらほだされるものだから。」
と言ってたそうな。
私はそれを聞いて「ふざけるな」と思ったけど、今度こそ本当の安堵感に包まれた。母の報告に対して、顔色も表情も全く変えることなく、「あ、そう」とだけ返事しておしまい。

お見合いが破談になって良かったね、って思うでしょ。
と・こ・ろ・が・・・
破談になった翌日、親戚から新たな縁談が2件も送られてきたのです。
しかも両件ともに先方は私の釣書を見て「会いたい」という返事をもらっております、なんだと。そして「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」と見合いすることを母に決められてしまいましたさ。
そこに私の意志はございません。

私はお見合いそのものは否定しません。
最近でこそ嫌な思いをたくさんしているけれど、初めてのお見合いはとても良かったから、悪い印象も本当のところ、ありません。
興味のある方は以下のエントリをどうぞ。
初めてのお見合い(その1) (その2) (その3) (その4) (その5)

お見合いは、いろんなプロセスを省いてとにかく結婚したい人にはうってつけだと思います。
全て段取りされていて、あとは本人達が結婚したいと思うか否か、だけだもの。
最初から「結婚」という土俵の上で出会ってどうするか。
極めてカジュアルな見合いは知らないけれど、基本は本気で結婚相手を見つける為のもの。ただし、結婚相手としてはふさわしくないけれど、お友達になりたい、という選択肢はありません。