SiCKO

マイケル・ムーアの「SiCKO」を敷島シネポップで見てきました。
久しく映画は見てなかったのに、一度見たら、次も次もとなりますね。
半年ぶりに見た映画は別のものなのですが、まだレビューを書き上げるまで落とし込めていないので、後から見たこちらを先に。

基本的なところはあちこちで紹介されているので、目にしたことがあるかと思いますが、「SiCKO」とは「病人」のこと。
デーブ・スペクターによると、「(病的な)変態野郎」というダブルミーニングになっていて、実際の病人だけでなく、アメリカの医療保険全体も指しているらしい。

映画は、アメリカの医療制度の劣悪さを、無料医療の制度が充実しているカナダ、イギリス、フランス、キューバの事情と対比しながら描かれています。

アメリカに住んでいたことがあるので、当時を思い出しながら、検証しつつ見てしまいました。
さすが、マイケル・ムーア、問題提起の仕方は素晴らしい。
エンターテイメント性の高いドキュメンタリーになっています。

ただし、ただし、です。
マイケル・ムーアの言ってることをそのまま鵜呑みにしてはいけません。
アメリカの健康保険は皆保険ではない、入るのにハードルが高い、など、いろいろと問題があるのは確かです。
私がアメリカに渡ったのは10年も前の話だけど、その当時から映画の中で描かれているようなアメリカの健康保険の悪い噂は聞いていて、アメリカにいてる間は、病院にかかることがないように。。と、かなり緊張しつつ、保険も日本でしっかり入ってから渡米した経緯があります。(行ってみたら、学校の保健センターがあって、またちょっと事情が違ってたのだけどね。)非営利メンタルヘルス団体にいたこともあるし、
今もアメリカ(だけじゃないけど)の医療業界の末端の末端の末端の仕事をやっているようなものなので、経験とすりあわせながら見ていて感じたのは、嘘を語っていたり、ヤラセで作り上げていたりする訳ではないですが、やはり極端すぎるなぁってこと。だからこそ、人々にインパクトを与えているのでしょうが。

悪を描くために、バッサリとカットされたところが目につきましたね。
アメリカの医療技術や製薬技術の素晴らしさとか、(ほら、日本では対応できないと言われた難病の人がアメリカまで行って手術しているニュースが時折でるでしょ?)それから、保険が充実している国の税金の高さとかね。

面白かったのだけど、なるべく英語で聞こうと頑張っていたせいか、途中で睡魔に襲われてしまいまして、9.11での救命員たちのその後のエピソードのところは、しばし夢の中でした。。。

ドキュメンタリーだけど、半分はエンターテイメントと思って見た方が良いと個人的には思います。
でも、見終わった後で、アメリカって大変だなぁ、などと、対岸の火事で終わらせず、この問題について考えてみたらどうかと。

日本の医療制度は来年4月から変わりますからね。
アメリカみたいに日本も国民健康保険が民営化されないとも限りません。介護の分野に目を向けてみたら、映画の中の出来事を「アメリカのことだから」とは言っておれないですね。

日本はまず、会社勤めの人も自分で税金を計算して申告して収めるようにした方が良いのでは?と、個人的に思ってます。税金がお給料から天引きされている間は、税金に対する意識も低いままだと思うのよね。

それにしても、こんな映画を作ってメジャーどころで上映できているアメリカはまだ健康的な気がしたりして。
日本じゃまず制作もされないし、できたとしても、単館上映が精一杯じゃないかと。