春雷

明け方、激しい雷の音で目が覚めた。
なんとなく悪い夢を見ていたので、途切れることなく鳴り響く雷の音に
夢の続きを見ているのかと思った。
やがて、夢ではなく、現実のものと気づく。

・・春雷
春の到来を伝える大変めでたい雷と言われるものだ。

雷鳴に驚いて巣ごもりしていた動物たちが目を覚ますというけれど
この、自然からの春の到来宣言は私の身体にも直撃したのかもしれない。
身体のあちこちに痛みを感じた。
そう、まさに、あちこちから痛みが吹き出した、という表現がピッタリだった。
とっさに「・・・どうしよう。今日は会社を休めないよ。」と思った。
なんて仕事人間な私。
月末であること、積み残している仕事、今日こなさないといけない仕事
そして今日は歓送迎会。。

まだ起きる時間まで少しあるから、それまで眠ったら大丈夫。
そう思いながら、痛むところに手をあてて
「無理ばかりしてごめんね。でも、今日一日、今日もう一日こらえて。。」
と、自分の身体に話しかける。
うつらうつらとしながら、雷鳴の凄まじさに
このままでは眠れやしない、と、閉口する。
カメラのフラッシュのように稲光が何度も光り、
目の前が何度もチカチカする。
近くで落雷があるかもしれないな、とも思う。
そして、今度は土砂降りの、全てを洗い流すかのような、雨。
激しく窓をたたきつけるような雨の音を聞いているうちに
再び眠ってしまったらしい。
アラームの音で目を覚ますと、雨はあがっていて、身体の痛みもひいていた。
「雨降って地固まる、かな。」
そんな風に思いながら起き出した。

今はとにかく、毎日毎日、目がまわりそうに忙しい。
瞬きを数回しているうちに1週間が過ぎ去っていくような気がする。

歓送迎会には、少々遅れていったので、全然、歓送迎会にならない場所に
座ることになってしまった。私が本来のチーム外で請けている仕事を
分担してくれている別のチームのマネージャと、ぽつぽつ話をしてた。
去年の今頃も同じ店で歓送迎会をしたんだっけね、なんて。

あの頃の私は、自分を強く強く律して、自分の本音の気持ちを封印していた。
お酒を飲むと、日頃自分を律している部分が崩れて 本音の感情が出てくるから
極力お酒は飲まないようにしていた。酔わないようにお酒を飲んでいたことを
思い出して、今は、そんな風に自分を律してはいないな、と思った。
でも、相変わらず、かなりストイックな自分というのは存在している。
そして、酔いがまわると防御が外れて生身に近い自分が出てしまうことを
少し怖がっていたりする。
酔っぱらった状態で一人で家に帰るのは一番嫌いかもしれない。
とんでもない寂しさに襲われてたまらなくなるから。
少し前までは、最寄り駅まで一緒の同僚がいたから大丈夫だったけど。
ただの寂しがりやになってしまって、誰かに電話でもかけて、
とりとめもなく話をして寂しさを解消したい気持ちになるのだけど、
それをしない、もしくはできないのは、私の最後のプライドか?