日本人人質事件から

香田証生さんの事件は、残念な結果で終わってしまった。
報道されている内容だけで、これ、といった判断はできない。

ただ、報道されていることを聞くにつれ、
彼は周囲の状況を読めなかったのかな、という疑問が残る。
いろんな人に止めるよう諭され、
イラクに移動するのにもすごく守ってもらっていたらしいのに。
周りの人たちの行為から、彼は何も感じなかったのだろうか。


報道によると、彼は 
「『何でも見てやろう』という気持ちが強く、
いろいろ見聞きしてきては周囲に披露していた」

らしい。
これ自身は、おおいに結構と思う。
でも、それを明らかに危険な地域でやることかな、とも思うのだ。

好奇心が先走りすぎて、周囲が見えなくなっていたのだろうか。
いろんな人に止められながらも、かくまってもらいながらも、
明らかに外国人と分かる格好で危ないと分かっている国に行った。
これを若気の至り、というのだろうか。

亡くなってしまったからどうしようもないけど、
ある意味、究極の『現実』を彼は体験したのではないか、と思う。
皮肉ながらも、彼が見てみたい、と思っていた最高のものを見てしまったのではないかと。

一連のニュースを見て、母が
「前に人質になった3人と違って、旅行気分で行ったんやろ。
死んでもしゃーないと思う。
自分の息子やったらひっぱたくわ。」
と言っていた。

「家族のコメントもマスコミに向けて言うもんじゃない。
平和ボケしてる。これが本当に平和な時ならかまへん。
でも、地震で全員が離村したり、台風で大きな被害を受けたり、
いろんなことが起こっているのに、あんなことが言えるなんて。
もちろん、心の中で思う分にはかまへん。
私があの立場やったらまず、世間様に迷惑をかけて申し訳ないって謝る。
子どものことも、心の中で見捨ててゴメンって謝りながらも
公では『殺されても仕方ありません』って言う」

と、ビールを飲みながら激昂していた。
明けて翌朝、殺害されたことが報道され、

「殺されてもたな」

と言ったきり、それ以上は何も言わない。

それは「死んでもしゃーない」と言ってても、それは
「死ねばいい」でも「死んで当然」でもなく、
やっぱり生きて帰ってきたら良い、と思っていたから。

そして、私もそんな母の言葉に
「そやな」
としか返さなかった。