切ない

私の会社は人の入れ替わりが激しい。
プロジェクトによって、その期間だけ派遣で人を補充したり、
ということもあるのだけど、根本的に人が定着しない部門がある。
人が入れ替わることに対して、基本的にクールに徹してきた私ではあるけれど、健康を害したり、情熱を維持できなくなって辞めていく人を見ると切なくなる。

先日、私がとっても頼りにしていたオペレータ嬢が辞めていった。
別の部署なんだけど、私のチームの版下作成などの仕事を担ってくれていて、どんなことを頼んでも、何稿目になっても、嫌な顔することなくこなしてくれるありがたい人だった。

彼女の本来の仕事があまりに過酷すぎて、体調を崩してしまったのと本人曰く
「プロジェクトを進めているうちに心が折れてしまった」
のだった。
送迎会のスピーチでは、そんなことは一言も口にしなかったけれど、彼女の最後のスピーチを聞きながら、私は泣きそうになるのを堪えるのに必死だった。悲しいというよりも、怒りを覚えていたのだった。

彼女に対して、ではなくて、業界のありようというか、働かせようというか。
この前、36協定の話を聞いて虚しくなったところだった。
上流の会社が残業時間を短くというのに取り組んで、切り捨てられた仕事は結果的に下請けがカバーすることになってしまっていて、仕事がきつくなる。

働きたくても働きぐちがなくて働けない人。
働いている人は、働いている人で、倒れそうになるまで、いや、
実際に倒れてしまうまで働かされていたりする。
どうして、仕事を均等に分け合ってすることができないんだろう。
なんでこんな働き方がまかり通ってしまうのだろう。
グローバリゼーションが都合良く扱われてコストダウンばかり求められて、でも、質は落とすわけにいかなくて。
そんなことばかりが問題ではないと思うけれど、何かがおかしい。
いろいろ考えていると、怒りがこみ上げて仕方ない。

彼女とは歳が一つしか違わないから、余計に自分のことのように感じられて仕方なかったのかもしれない。
仕事に対する愚痴はいっさい語らなかったけれど、ただ一言
「プロジェクトを進めているうちに心が折れてしまった」
とだけ私に言った。
でも、私から依頼される仕事は楽しかったから中途半端な形で辞めていくのは心苦しく申し訳ないと言ってくれた。
自分がディレクションしなくて良いという気楽さや、チームの中の一員として動く安心感みたいなのが楽しさを感じさせたのかもしれない。
ただ、彼女曰く「心が折れた」状態は、仕事を見ていて感じていたから、すごく切なかった。
ミスが増えたとか、そんなんじゃないのだけどね。
それは私自身、どこかでしっかりと休みを、最低でも1週間くらいリフレッシュできる休みを取らないと、そのうち本気でヤバイと感じているからかもしれない。
私は社内でチームを組んでずっと仕事をしているので、心が折れることなく、なんとか続けられているのだと思う。
折れはしないけど、折れそうになる瞬間っていうのは、何度もあって、なんとか折れないように、だましだましやっているというのが正直なところではある。

この2年ほど、社内社外を問わず、疲れ果てて辞めていく人、疲れ果てたならまだ良くて、病んで辞めていく人を多く見てきて、どうしてこんなことがまかり通るのか、悲しくて切なくて仕方ない。
私自身、仕事そのものは好きだから。