会社以外で関わっている活動でのお話。

私より一回り年下の仲間が腕まくりをしていた。
それそのものは何てことない光景だけど、その露出された両腕におびただしい
リストカットの跡を見た。
彼女がリストカットをしていた(もしかしたら今も?)ことは知っていたので、
その跡を見て今更驚くことでもなかったのだけど、知り合って3年にもなって
初めて見たのだった。彼女自身、長袖しか着ずにひたすら隠している訳でもなく、
夏にはノースリーブ姿も見たことがあったはずなのに、これまで彼女の
腕の傷跡に目がいったことがなかったのは、なんでだろう。

お互いの身の上話はほとんどしたことがないけれど、彼女も私も
脛に同じ傷を持つ者同士、何も言わなくても分かるニオイがある。
へらへら〜っとした風貌にだまされがちだけど、生きがたい日々を一日一日、
文字通りSurviveした時期があり、今も自分の傷と対峙し続けてる。彼女の場合は、
リストカットだけじゃなくて、本当に「よく死ななかったね」というエピソードが
いくつもあるのを知ってる。

同じネズミ年生まれなので、
「ネズミ年生まれは食いっぱぐれがないっていうけど、どんな時でも
なんとなく食っていけてるでしょ。」
って言ったら
「へへへー、そうだね」
と笑ってた。

お互いに起こったことは知らないけれど、知り合って間もない頃、電車の中で
彼女がぽつりと
「ちょっと前まですごくしんどかったんだー。今は少しマシになったけど。」
って言い出した。

「そっか、しんどかったんやー。でも、一度どん底まで落ちて這い上がった
経験があるから、落ちるところまで落ちたらまた上がるって分かってるやん。」
「でもまた落ちちゃうんだけどね」
「そうそうー、でも、落ちたら落ちっぱなしじゃなくてまた上がるから」
「そうだねー」
「そんなもん、そんなもん」

何で「しんどい」思いをしていたかなんて訊かない。逆に私がヘラヘラしながら
「夏の終わりは何年経ってもダメだぁ・・・」
と、あまりのつらさにちょっとブレイクを入れに会場を逃げ出した時、
途中で出会ったのだけど、何があったのか彼女は訊かなかった。
訊くだけ野暮ってことよ。
彼女も私もつらい時ほどヘラヘラしてしまうから事情を知らない人には
「だらしがない。スタッフなのに自覚がない。」
などと批判されてしまったりする。
分からない人には、ぜんっぜん分からなくていいさぁ、ね?

何度も何度もチャレンジしながら途中でステップバックを繰り返し
前進しては後退をしつつも少しずつ乗り越えてきた。
涙を流しながら「これはまだツライ」と言うことはあるけれど、
ダメなことはダメだけどそれ以外のことには臆せず
「挑戦する、やってみる、つらかったらそれはその時」
という彼女の姿にいつぞやの自分の姿を重ねながら、
私も自分に対して新たな挑戦を課していくことを心に決めたんだ。
彼女と同じ仲間として。