炎のジプシー・ブラス

シネ・ヌーヴォで見てきました。

世界最速ジプシー・ブラス、「ファンファーレ・チョカリーア」の
公演の旅を追った作品なのですが、
音楽好きな濃いぃ顔した素朴なおじさんたちが集まって、
楽しそうに演奏し、
楽器がない時でも、口三味線で音楽があふれ出すってのが素敵でした。

「チョカリーア」は「ヒバリ」という意味で
「ファンファーレ・チョカリーア」は訳すと
「ヒバリのファンファーレ」ですね。

数年前に「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」を見た時のような、
なんとも言えないゆるい心地よさで、途中で寝そうになるのを
我慢したところもありましたが、
全体的にほわん、として、あったかい感じのする映画でした。

パワー全開な演奏シーンがやっぱり一番の見せ場でしたね。
哀愁が漂う曲があれば、からっと陽気な曲あり、
でも、どの曲も根底には泥臭さ、というか、ジプシーらしさ、かな、
何とも形容しがたい魅力がありました。
また「世界最速」のキャッチコピー通り、演奏スピードが速い速い。
それがまた、独特な雰囲気を作っているのでしょうね。

2000年に彼らが来日した時のストリート・パフォーマンスの映像もあって、
渋谷のど真ん中で警察にとがめられるけど、
少しだけでいいから演奏させて、とお願いして
許可をもらってパフォーマンスをするシーンで
観客の日本人のおじさんも一緒に踊っていたりして
いいなぁ。。。とうらやましくなりました。

実は、「ジプシー」って言葉、良いのか?
って見る前は思ってました。
というのも、以前、人権問題に取り組む団体で働いていた
友人の前で「ジプシー」という言葉を使った時、
「ジプシー」は差別用語だから使っちゃダメだ、
「ジプシー」じゃなくて「ロマ」が正しい、
みたいなことを言われて以来、気にしていたのです。
心の底では

「じゃ、『ジプシー・キング』は『ロマ・キング』にせなあかんのか?
ほな、私のクロマチックでの十八番の『ジプシー・ローズ』も
『ロマ・ローズ』にせなあかんのか?」


などと、ぶつぶつ思ってはいたのですがね。

ファンファーレ・チョカリーアのメンバーをはじめ、
ヨーロッパのジプシー音楽関係者は

「ジプシーという呼び名は一般的で、それを使うことにジプシーの音楽家は抵抗がない。我々も経緯を込めてそう呼んでいる。呼称ではなく、使う側の気持ちが問題なのである」

と言っており、彼ら自身も英語で話す時は、
自らを「ジプシー」と呼んでいるのだとか。
日本版でも
敬意と愛情を込めて、彼ら自身が使っている言葉
「ジプシー」、「ジプシー・ブラス」を用いた。

とパンフレットにあり、なるほど。。と思った次第。
確かに、どんな言葉でも使う側の気持ちによって
意味合いは変わりますものね。
これを読んで、これまで胸につかえていたものが落ちた気がしました。

余談ですが、今年は音楽ドキュメンタリーの当たり年なんだとか。
音楽ドキュメンタリーは好きなので、今年は
どれだけ見ることできるかな、とちょっと楽しみ。